メーカーで在宅勤務・テレワークはできる?職種と仕事の段階で決まる製造業の現実|元・中の人の実感

メーカーで在宅勤務・テレワークはできる?職種と仕事の段階で決まる製造業の現実|元・中の人の実感

「メーカー 在宅勤務」「製造業 テレワーク できない」——こうした検索の裏には、工場がある会社に勤めている以上、家で働くのは無理なのではという不安があると思います。子育てや通勤の負担を考えて、在宅の可否を転職の条件に入れたい人もいるはずです。

私は生産技術を10年やって、別業界の製造業へ移りました。先に書いておくと、在宅勤務について私の体験から言えることは多くありません。そこでこの記事は、総務省・国土交通省・厚生労働省の公的な資料を土台に、メーカーの仕事の構造から「どこまで在宅にできるか」を整理します。体験と一般論は分けて書きます。

先に結論

製造業は「テレワークができない業界」ではありません。公的な調査では、製造業のテレワーク導入企業の割合は全体平均と同じくらいかやや上です。
ただし、会社に制度があることと、自分の職種で使えることは別です。在宅にできるかどうかは、職種と、同じ職種の中でも仕事の段階(構想・立ち上げ・量産)でほぼ決まります。

なお、子育てとの両立という観点は製造業で子育てと両立できる?工場勤務の3つの壁と働き方の組み立て方|元・中の人の実感に、転勤や工場の立地の話はメーカーの転勤・工場勤務のリアル|10年やった元・中の人が語る生活と働き方にまとめています。この記事は在宅勤務・テレワークの可否だけを扱います。


結論:制度の有無より「職種×仕事の段階」で決まる

在宅勤務の話は、3つの層に分けると整理しやすくなります。

層 問い 何で決まるか
会社 テレワークの制度があるか 会社の方針・規模
職種 その仕事の何割が、現物なしで進められるか 扱うものが「情報」か「物」か
段階 いまの担当が、どの時期にあるか 案件の進み具合(構想・立ち上げ・量産)

求人票で分かるのは、ほとんどが一番上の「会社」の層です。でも実際の働き方を決めるのは、下の2つ。制度がある会社でも、ほぼ毎日出社する職種があるし、同じ人でも時期によって在宅の比率が変わります。


公的な調査で見る、製造業のテレワークの実態

まず、業界全体の数字を確認しておきます。

企業側:製造業の導入率は全体平均より少し高い

総務省の通信利用動向調査(令和7年・企業編、常用雇用者100人以上の企業が対象)では、テレワークを「導入している」企業の割合は次のとおりです。

産業 令和5年 令和6年 令和7年
全体 49.9% 47.3% 50.1%
製造業 53.1% 50.6% 54.5%
情報通信業 93.2% 94.3% 92.8%

出典:総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表4-2

製造業は、全体平均と比べて低いわけではありません。「メーカーだから制度がない」という思い込みは、少なくとも企業単位では当たらないことが分かります。

働く人の側:「使ったことがある人」は3割ほど

一方、国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査(雇用されて働く人が対象のWEB調査)では、現在の仕事でこれまでにテレワークをしたことがある人(雇用型テレワーカー)の割合は、全体で25.2%、製造業で30.6%でした(令和5年度は32.6%)。情報通信業は74.1%です。

ここにも製造業らしさが出ています。製造業の会社には、設計・開発・事務系など、もともと在宅にしやすい仕事も多く含まれます。業界の平均は、工場の現場とオフィスの仕事を混ぜた数字です。自分の職種がどちら寄りかで、平均から上にも下にも大きく外れます。

導入している会社でも、使う人は一部のことが多い

もう一つ見ておきたいのが、同じ総務省の調査で、テレワークを導入している企業のうち「利用している従業者が5%未満」と答えた企業が40.2%あったことです(令和7年・全産業)。「80%以上」は10.0%でした。

また、導入しておらず予定もない企業に理由を聞くと、最も多かったのは「テレワークに適した仕事がないから」(79.0%)でした。これは全産業の数字ですが、製造業の現場を知っていると、納得のいく結果です。

まとめると、制度はあるが、使えるかどうかは仕事しだい。これが公的な数字から見える製造業の実態だと読んでいます。


職種別に見る、在宅にしやすい仕事・しにくい仕事

メーカーの職種を、「扱うものが情報か、物か」で並べてみます。以下は一般的な傾向で、会社や製品によって大きく変わる前提で見てください。職種そのものの違いは生産技術・設計・生産管理・品質保証の違い|製造業の職種の地図にまとめています。

職種 在宅にしやすい仕事 現場が要る仕事 傾向
設計・開発 図面・解析・仕様の検討・資料づくり 試作品の評価・実験・現物の確認 在宅を組み込みやすい側
生産管理・調達 計画の作成・発注・取引先とのやりとり 現場の進み具合の確認・緊急時の調整 比較的組み込みやすい
品質保証 書類の作成・データの集計・報告 不具合品の確認・監査・現場での立ち会い 仕事の配分しだい
生産技術 構想・見積・仕様書・データの解析 据付・試運転・量産立ち上げ・トラブル対応 時期で大きく変わる
製造・設備保全 (ごく一部の事務作業) ラインの運転・点検・修理 在宅はほぼ難しい

この表で見てほしいのは、同じ会社の中に、在宅しやすい職種としにくい職種が同居していることです。業界全体の数字が平均的に見えるのは、このためです。


生産技術は「仕事の段階」で在宅の比率が変わる

表の中で、生産技術だけ「時期で大きく変わる」と書きました。ここは職種の性質がよく出るところなので、もう少し分けて書きます。

段階 主な仕事 在宅との相性
構想・計画 工程の検討、設備の仕様決め、見積の比較、資料づくり 比較的よい。ただし現物を見ての検討は残る
立ち上げ 据付、試運転、条件出し、作業者への引き継ぎ 悪い。設備の前にいることが仕事になる
量産・改善 データの解析、改善案の検討、トラブル対応 解析は在宅にしやすいが、トラブルは現場

つまり生産技術の場合、「在宅ができる職種か」と聞かれると、「時期による」としか答えられないのが正直なところです。構想の時期が長い担当なら在宅を組み込みやすく、立ち上げが続く担当なら難しい。設備の新しさや担当の分け方によっても変わります。

体験として言えるのは、私がいた生産技術の現場では、現物を見て決める場面が多かったということです。図面やデータだけで判断できる仕事もありましたが、最後は設備の前で確かめる、という流れが基本でした。在宅の比率を上げたいなら、この「最後に現物で確かめる」部分をどう分担するかが鍵になると思います。


在宅を難しくしている、仕事以外の3つの要因

仕事の中身のほかにも、在宅を難しくしている要因があります。

① 図面・技術データの持ち出しの決まり

メーカーにとって、図面や工程の条件は重要な技術情報です。社外のネットワークから見られる範囲を絞っている会社もあり、家からでは触れないデータがあると、在宅でできる仕事はその分減ります。総務省の調査でも、テレワークを導入しない理由として「情報漏えいが心配だから」が16.8%挙がっていました。

② 現場の人との関係

ラインで働く人が毎日出社しているなかで、技術側だけが家にいることに、気まずさを感じる人もいます。同じ調査では「周囲の社員にしわ寄せがあるから」という理由も8.4%ありました。在宅にするなら、現場からの連絡にすぐ応えられる形を作っておくことが、関係を保つ前提になります。

③ 評価への不安

「出社していないと、見てもらえないのでは」という不安です。これについては、厚生労働省のテレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(令和3年3月改定)に考え方が示されています。テレワークの実施頻度が働く人に委ねられている場合などに、オフィスに出勤していることを理由に高く評価することは、適切な人事評価とはいえない、という趣旨です。また同じガイドラインは、一般にテレワークが難しいとされる業種・職種でも、個別の業務によっては実施できる場合があるとして、仕事の進め方を見直すことを勧めています。

ガイドラインは会社の運用を直接決めるものではありませんが、在宅について上司や人事と話すときの共通の土台として知っておく価値はあると思います。評価の見えにくさそのものについては、生産技術のやりがい・面白さはどこにある?|元・中の人が5つの場面で語るでも、成果が見てもらえない状況として触れました。


在宅を優先したいとき、取れる手

在宅の比率を上げたい理由は、人によって違います。通勤の負担、家族の事情、集中できる環境。理由によって、取れる手も変わります。

  • 今の職種のまま、在宅の日を作る……構想や資料づくりなど、在宅でできる仕事をまとめて特定の日に寄せる。上司と「この仕事は在宅でやる」と仕事の単位で決めておくと通りやすい
  • 同じ会社で職種を変える……設計や生産管理など、在宅を組み込みやすい職種への異動を考える。この場合は会社を変えずに済みます(→社内異動で解決できること、できないこと|転職しないという選択【元・中の人の実感】)
  • 会社を変える……在宅の運用が根付いている会社へ移る。ただし、同じ職種なら転職先でも現場の比率は大きく変わらないことが多い点に注意が要ります

3つ目の「会社を変える」を選ぶ前に、在宅できない原因が会社なのか職種なのかを分けておくことが大事です。原因が職種なら、会社を変えても解けません。休みの取りやすさが職種と担当で決まるのと同じ構造で、この点は工場勤務は休めない?メーカーの年間休日・有給・長期連休のリアル|元・中の人の実感でも書きました。


求人票・面接で確かめておくこと

求人票の「テレワーク可」「在宅勤務制度あり」は、制度があることを示すだけで、その部署で実際に使えるかまでは分かりません。一般的な観点として、次の点を確かめておくと実態に近づけます。

  • 配属予定の部署での実績……「その部署の人は、週に何日くらい在宅していますか」。制度の有無ではなく、実際の日数で聞く
  • 現場への立ち会いの頻度……据付や試運転、トラブル時にどのくらい現場に出るのか
  • 入社直後の扱い……入社後しばらくは出社が基本、という運用をしている会社もあります。いつから在宅を使えるのか
  • データの扱い……図面や技術データを家から扱えるのか。扱えないなら、在宅でできる仕事は何か
  • 勤務地との組み合わせ……在宅が週の一部なら、残りの日は工場や事業所に通うことになる。通勤の距離も合わせて見ておく

会社選びの軸の立て方はメーカー就活の軸の作り方|何を見て会社を選ぶか、元・中の人の視点で整理するに、面接での聞き方は生産技術の転職面接で聞かれること|答え方の軸と、製造業ならではの質問にまとめています。働き方の条件を確かめることは、遠慮する話ではないと思います。


よくある疑問Q&A

Q. メーカーで、完全在宅(フルリモート)の仕事はありますか。
→ 職種によってはありえますが、物を扱う仕事が中心の職種では難しいことが多いと思います。総務省の調査でも、導入企業のうち従業者の8割以上が利用している企業は1割ほどでした。週の一部を在宅にする形のほうが、現実的な落としどころになりやすいと考えています。

Q. 生産技術でも在宅はできますか。
→ 仕事の段階によります。構想や資料づくり、データの解析は在宅にしやすく、立ち上げやトラブル対応は現場が必要です。担当している案件がどの段階にあるかで、在宅の比率は変わります。

Q. 在宅を希望すると、評価が下がりませんか。
→ 会社の運用によるので言い切れません。ただ、厚生労働省のガイドラインでは、出社していることを理由に高く評価することは適切ではないという考え方が示されています。気になるなら、何をもって評価されるのかを先に上司とすり合わせておくのがよいと思います。

Q. 工場勤務から在宅中心の働き方に変えるには、転職しかありませんか。
→ そうとは限りません。社内で在宅を組み込みやすい職種へ移るという道もあります。原因が会社なのか職種なのかを先に分けると、転職以外の手が見えることがあります。

Q. 自動化が進めば、製造業でも在宅が増えますか。
→ 遠隔で設備の状態を見られる仕組みが広がれば、在宅でできる仕事は増えていく可能性があります。ただ、その仕組みを現場に入れる仕事は現場で行うことになります。仕事の変わり方についてはメーカーエンジニアの将来性|10年後も食えるのかで整理しました。


まとめ

  • 公的な調査では、製造業のテレワーク導入企業の割合は全体平均と同じくらいかやや上(令和7年:製造業54.5%、全体50.1%)。「メーカーだからできない」とは限らない。
  • ただし、導入企業でも利用者が5%未満の企業が4割。制度の有無と、自分が使えるかは別。
  • 在宅にできるかは、職種(情報を扱うか、物を扱うか)と仕事の段階(構想・立ち上げ・量産)でほぼ決まる。
  • 仕事以外にも、データの持ち出しの決まり・現場との関係・評価への不安が在宅を難しくしている。
  • 確かめるなら、求人票の「制度あり」ではなく、配属予定の部署で実際に週何日在宅しているかで聞く。

メーカーで在宅勤務ができるかどうかは、「業界」で決まる話ではなく、「どの仕事を、どの時期にやっているか」で決まる話です。在宅を働き方の条件にしたいなら、まず自分の仕事のうち何割が現物なしで進められるかを数えてみる。そうすると、今の会社で工夫できる範囲なのか、職種ごと変える必要があるのかが、だいぶはっきりしてくると思います。


中の人・カズ

この記事を書いた人|カズ(元・生産技術10年)

大手製造メーカーで生産技術を10年以上(設備の立ち上げ・工程改善・量産化を現場で担当)した後、別業界の製造業へ転職。「元・中の人」の一次情報で、メーカーエンジニアの仕事・キャリア・転職を、比較サイトには書けない本音で発信しています。特定の企業・製品・個人が分かる情報は書かず、体験と一般論を分けて記しています。