生産技術のやりがい・面白さはどこにある?|元・中の人が5つの場面で語る

生産技術のやりがい・面白さはどこにある?|元・中の人が5つの場面で語る

「生産技術」で検索すると、上のほうに並ぶのは「きつい」「やめとけ」「しんどい」ばかりです。このブログでも、その問いには正面から答えてきました。ただ、それだけを読んで職種を判断するのは、片側の情報だけで決めることになります。

私は生産技術を10年やって、別業界の製造業へ移りました。きつい場面は確かにありました。それでも10年続いたのは、この仕事にしかない手応えが、はっきりした「場面」としてあったからです。この記事では、その正の側だけを扱います。

先に結論

生産技術のやりがいは、職種の説明ではなく「場面」でやってきます。代表的なのは5つ。
そして重要なのは、その場面が来るまでには時間差があること、職場の条件によっては来にくくなることです。「面白くない」と感じたとき、原因が自分の適性なのか職場の条件なのかで、打つ手はまるで変わります。

なお、しんどさの中身については【本音】生産技術は「きつい」「やめとけ」って本当?10年やった元・中の人が正直に答えるで、後悔しやすいケースについては生産技術は「やめとけ」って本当?向いていない人・後悔しやすいケースと、それでも続ける価値で扱っています。この記事はやりがいの中身そのものを分解するのが目的なので、負の側はそちらに預けます。


結論:やりがいは「職種の説明」ではなく「場面」でやってくる

求人票や職種紹介には、たいてい「ものづくりの根幹を支える仕事」「改善を通じて生産性向上に貢献」と書かれています。間違ってはいません。ただ、この書き方だとどの瞬間に手応えが来るのかが分からない。私も就職する前は、正直なところ何も想像できていませんでした。

実際にやってみると、手応えは抽象的な貢献感ではなく、きわめて具体的な場面としてやってきます。しかもその場面は、だいたい決まった型を持っています。以下の5つが、私が10年のあいだ繰り返し感じてきたものです。


生産技術のやりがい、5つの場面を1枚で見る

場面 何が起きているか 感じ方の質 来やすい時期
①正解のない問題を解く 教科書に答えがない条件で、自分の仮説を立てて当てにいく 知的な面白さ(じわじわ続く) 担当を任され始めてから
②組んだラインが動いた日 紙の上の工程が、初めて通しで実物として動く 一発の強い達成感 立ち上げを任されてから
③効果が数字で出る 打ち手の前後を測ると、良くなった分が数字で見える 納得感・説明できる自信 比較的早い時期から
④判断が物として残る 決めた工程や設備が、自分が離れても動き続ける 後から効いてくる充足 数年たってから
⑤人を動かして成立する 現場・設計・保全・調達が同じ方向を向いた瞬間 安堵に近い手応え 調整を任されてから

この5つは性質がばらばらです。一発で強く来るもの(②)もあれば、何年かしてから効いてくるもの(④)もある。だから「やりがいがあるか」を一言で答えるのは難しく、どの種類の手応えが自分に刺さるかで、感じ方がかなり変わります。


場面①:正解のない問題を、自分の仮説で解く

生産技術の仕事は、答えが本に載っていないのが常です。同じ製品でも、設備の型式が違えば通る条件は違い、材料のロットが変われば挙動も変わります。教科書どおりにやったら通った、という経験のほうが少ない。

そこで何をするかというと、「たぶんここが効いている」という仮説を立てて、確かめにいく。条件を振って、変化を見て、外れたら立て直す。この繰り返しです。言ってしまえば地味な作業ですが、当たったときの感覚は独特です。誰も答えを知らなかった問題に、自分が最初に答えを出した状態になるからです。

なぜ、これが飽きにくいのか

  • 条件が毎回違うので、前回の答えをそのまま使えない。似た問題でも解き直しになる
  • 変数が多い。設備・材料・作業・環境・時間、どれも効く可能性がある
  • やってみないと分からない部分が必ず残る。実験でしか埋まらない
  • 解が一つではない。設備で解く/工程で解く/作り方で解く、どれもあり得る

この「変数を絞って当てにいく」感覚を体系立てて扱う道具もあります。ばらつきの原因を実験で切り分けていく考え方については品質工学(タグチメソッド)とは?生産技術の現場での使いどころで整理しました。面白さの正体を言葉にしたい場合、こうした道具を知っておくと自分がやっていたことの説明がつきやすくなります。

私の場合で言うと、原因がどうしても絞れない不具合に何週間か向き合ったことが何度かあります。しんどい期間ではあるのですが、振り返るとその時期がいちばん頭を使っていて、いちばん力がついていたと感じます。これは体験としての実感で、誰にでも当てはまるとは思いません。ただ、「決まったことを決まった手順でやりたい」タイプの人には、この部分は苦痛に映る可能性もあります(→生産技術に向いている人・向いていない人|10年やった元・中の人が語る適性の見極め方)。


場面②:組んだラインが、初めて通しで動いた日

これは、生産技術でしか味わえない部類のものだと思います。

工程を紙の上で設計し、設備の仕様を決め、レイアウトを引き、据え付けて、調整して——その一連が終わったあと、入口に材料を流すと、出口から製品が出てくる。当たり前のことのようですが、初めて通しで流れた瞬間は、何度経験しても独特です。

ここが特別なのは、自分の判断がそのまま物理的に目の前で動く点です。書類の上で終わる仕事ではなく、鉄と電気とプログラムの塊が、自分が決めたとおりに(あるいは決めたとおりにならず)動く。うまく動かないときの落胆も大きいぶん、動いたときの振れ幅も大きい。

ただし、この場面には条件があります。立ち上げ案件が自分に回ってくることです。既存ラインの維持と改善が仕事の中心になっている職場では、この場面は数年に一度しか来ないこともあります。ここは後半の「やりがいが痩せる条件」でもう一度触れます。


場面③:効果が数字で出る——自分の打ち手が計測できる

生産技術の仕事は、成果がほぼ必ず数字になるという珍しい性質を持っています。

  • 不良率が何パーセントから何パーセントへ動いたか
  • 1個あたりの加工時間が何秒縮んだか
  • 段取り替えに何分かかっていたのが、何分になったか
  • 設備の停止時間が、月あたりどれだけ減ったか

前と後を測れば、自分がやったことの効果が見えます。「たぶん良くなった気がする」で終わらないのは、働くうえでかなり大きい。良くならなかったことも同じ精度で分かるので、ごまかしは効きませんが、そのぶん納得感があります。

この「測る」習慣は、後から効いてきます。転職の場面で実績を語るとき、数字がある人とない人では説明のしやすさがまったく違うからです(→生産技術の職務経歴書の書き方|転職で効く"実績の言語化"のコツ)。やりがいの話と実務的な得の話が、ここでは重なります。

なお、数字の作り方や見方そのものについてはQC七つ道具とは?生産技術の現場での使いどころ|元・中の人の実感にまとめています。効果が見えないと感じている場合、打ち手が悪いのではなく測り方が決まっていないだけということも起こります。


場面④:自分の判断が「物」として残り、離れても動き続ける

これは、少し時間がたってから効いてくる種類のものです。

生産技術が決めた工程や設備は、担当が替わっても動き続けます。自分が別の部署に移っても、そのラインは今日も製品を出している。自分の判断が、自分から独立して働いている状態です。

私は転職して職場を離れましたが、かつて立ち上げに関わった工程の考え方が、そのあとも使われていると聞くことがあります。その瞬間の感覚は、達成感というより置いてきたものがちゃんと役に立っている、という静かな充足に近いものでした。

この手応えは、若いうちには来にくいものです。残るものを作るには、まず任される必要があり、任されるまでには数年かかるからです。ここは焦っても短縮しにくい部分だと感じています。年次ごとの変化については生産技術のキャリアパス|30代・40代の分岐点を元・中の人が整理でも扱いました。


場面⑤:人を動かして初めて成立する——調整が効いた瞬間

生産技術は、一人で完結しない仕事です。設計・製造現場・保全・品質保証・調達、それぞれ立場も優先するものも違います。板ばさみになりやすいのは、この構造ゆえです。

ただ、ここには裏側があります。立場の違う人たちが同じ方向を向いた瞬間に、物事が一気に進む。しかもその瞬間を作るのは、たいてい生産技術の役回りです。

現場が「その手順ならやれる」と言い、設計が「その公差なら出せる」と言い、保全が「それなら見られる」と言う。そこまで持っていくのは骨が折れますが、揃ったときの進み方は気持ちのよいものです。達成感というより、安堵に近い手応えだと私は感じていました。

関係する職種がどう違うのかを整理しておくと、この調整の意味が分かりやすくなります(→生産技術・設計・生産管理・品質保証の違い|製造業の職種の地図)。


やりがいには「時間差」がある——1年目に感じにくいのは自然

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分かもしれません。

上の5つの場面は、入社してすぐには、ほとんど来ません。最初の数年は、先輩の担当の一部を見たり、記録を取ったり、立ち会いをしたりが中心になりがちです。決める側に立っていないので、「自分の判断が動いた」という感覚が生まれにくい。

時期 任されやすい範囲 来やすい手応え
1〜2年目 先輩の担当の一部・記録・立ち会い 分かるようになる面白さ(場面③が小さく来る程度)
3〜5年目 工程のひとかたまり・改善のテーマ 場面①③⑤が本格的に来始める
5年目以降 立ち上げを頭から・他部署との折衝 場面②④が加わる

この表はあくまで一例で、会社の規模や案件の回り方で大きくずれます。ただ、順番としてはこうなりやすいという感覚は、私の周囲でも共通していました。

言いたいのは、配属直後に「この仕事は面白くない」と結論を出すのは早い可能性があるということです。面白い部分にまだ手が届いていないだけ、という状態は珍しくありません。もちろん、何年待っても合わないこともあります。その見極めは別の話で、向き不向きの記事のほうが役に立つはずです。


逆に、やりがいが痩せるのはどんなときか(4つの条件)

「生産技術が面白くない」という声を聞くとき、その原因が職種ではなく職場の条件にあることがあります。適性の問題と切り分けたいので、痩せやすい条件を挙げておきます。

① 立ち上げ案件が回ってこない

既存ラインの維持が中心で、新規の立ち上げが何年も来ない職場では、場面②がまず来ません。設備が成熟していて、生産量も安定している事業では起こりやすい状況です。悪い職場という意味ではなく、手応えの出どころが違うだけですが、立ち上げの面白さを期待して入ると差を感じやすいところです。

② 効果を測る仕組みがない

改善しても、前後のデータが取れていないと効果が見えません。そうなると場面③が消えます。データが取れない設備なのか、取る手順が決まっていないだけなのかで、打てる手は違います。後者なら、自分で測る仕組みを作るところから始められます。

③ 決めたことが、上の都合ですぐ覆される

現場を見て組んだ計画が、たびたび上流の都合で白紙になる状況が続くと、場面①④が積み上がりません。判断が残らないからです。これは構造の問題なので、個人の頑張りでは動かしにくい部分だと感じます。

④ 改善が「やって当たり前」として扱われる

成果が数字で出ているのに、社内で誰も見ていない・評価にも反映されない、という状況です。場面③の手応えが目減りします。ここが長く続くと、外に出て評価を確かめたくなるのは自然なことだと思います(→生産技術の年収リアルと、上げ方|10年やった元・中の人の実感と3つのルート)。

この4つは、いずれも自分の適性とは別の話です。面白くないと感じたとき、まずここを確認しておくと、「向いていないから辞める」という結論に早く飛びつかずに済みます。


やりがいを自分の側から増やす、3つの小さなやり方

職場の条件をすぐには変えられなくても、手応えの出どころを自分で増やすことはできます。私が意識していたのは次の3つです。効果を保証するものではありませんが、費用はかかりません。

  • 何をやる前でも、必ず前の状態を測っておく。後から効果を語れるかどうかは、ここで決まります。改善してから「前はどうだったか」を思い出そうとしても、たいてい手遅れです
  • 自分が「なぜそう決めたか」を短く残す。判断の理由を書いておくと、外れたときに何が違ったのかが分かります。積み上がると、そのまま自分の資産になります
  • 現物を見に行く回数を、自分で決めておく。机の上だけで組んだ工程は、だいたいどこかで外れます。逆に、現場で見つけた気づきは、そのまま面白さの種になりやすいと感じました

3つとも地味ですが、上の5つの場面のうち①③④は、この習慣があるかどうかで来る頻度がかなり変わります。


そのやりがいは、転職市場でどう見られるか

やりがいの話は、内側の感覚で終わりがちです。ただ、生産技術の場合はやりがいを感じた場面が、そのまま実績の材料になるという良さがあります。

  • 場面①(仮説を立てて解いた)→ 課題解決の進め方として語れる
  • 場面②(立ち上げをやった)→ 経験として最も分かりやすい単位になる
  • 場面③(数字で出た)→ そのまま定量的な実績になる
  • 場面⑤(調整して通した)→ 他部署を巻き込んだ経験として評価されやすい

面接でも、この4つは形を変えて必ず聞かれます。どう答えるかは生産技術の転職面接で聞かれること|答え方の軸と、製造業ならではの質問にまとめました。ここで詰まるのは、経験が足りないからというよりやってきたことが言葉になっていない場合がほとんどだと感じます。


「やりがいが続く職場か」を、入る前に見る4つの問い

転職や就職で職場を選ぶとき、上で挙げた「痩せる条件」を裏返して聞くと、実態が見えやすくなります。答えが出にくい質問ほど、何かしらの事情があると考えたほうがよさそうです。

  1. ここ数年で、新しいラインや設備の立ち上げは何件ありましたか(場面②が来るか)
  2. 改善の効果は、どんな指標で確認していますか(場面③が成立するか)
  3. 工程の決定は、どこまで生産技術の判断で進められますか(場面①④が残るか)
  4. 入って3年目の方は、いまどんな仕事を任されていますか(時間差がどれくらいか)

4つ目は特に有効だと感じています。制度の説明より、実際にその年次の人が何をしているかのほうが、手応えの来方をよく表すからです。


よくある疑問Q&A

Q. 「きつい」という記事と「やりがい」の記事、どちらが本当なのですか?
→ どちらも本当だと思います。同じ性質が、条件によって負担にも面白さにも転ぶのがこの仕事の特徴です。たとえば「正解がない」は、考えるのが好きなら面白さになり、決まった手順で進めたいなら負担になります。

Q. 1年目ですが、まったく面白いと感じません。向いていないのでしょうか。
→ 判断を任されていない段階では、この仕事の面白い部分に手が届いていないことが多いと思います。ただし、現場に出ること自体が苦痛、実物を見るのが好きになれない、という場合は時間で解決しにくい可能性もあります。適性の見方は別記事のほうが詳しいです。

Q. 立ち上げ案件が来ない職場です。転職したほうがよいですか。
→ 一概には言えないと思います。まず社内で立ち上げのある部署があるのかを確かめるほうが、選択肢を減らさずに済みます(→社内異動で解決できること、できないこと|転職しないという選択【元・中の人の実感】)。社内に無いと分かってから外を見ても遅くはありません。

Q. 会社の規模で、やりがいの出方は変わりますか。
→ 変わりやすいと感じます。大きい会社ほど分業が進むので一人の担当範囲は狭くなり、そのぶん深さが出ます。小さい会社は範囲が広く、通しで見られる代わりに一つひとつは浅くなりがちです。どちらが良いかは好みによります(→大手メーカーと中小メーカーの違い|どちらが合うか、7つの軸で比べる)。

Q. 面白さを感じられれば、待遇が低くても続けられますか。
→ そこは分けて考えたほうがよいと思います。やりがいがあることと、働き続けられる条件が揃っていることは別の問題です。片方で片方を我慢する形は、長続きしにくいと感じてきました。


まとめ

  • 生産技術のやりがいは抽象的な貢献感ではなく、5つの具体的な場面としてやってくる。
  • 5つは性質が違う。一発で強く来るもの(立ち上げ)と、後から効いてくるもの(残る判断)がある。
  • 来るまでには時間差がある。1〜2年目に感じにくいのは、面白い部分にまだ手が届いていないことが多いため。
  • 「面白くない」の原因は、適性ではなく職場の条件(立ち上げの有無・測る仕組み・裁量・評価)のこともある。先に切り分ける。
  • やりがいを感じた場面は、そのまま転職市場での実績の材料になる。測る・書き残す習慣が効く。

「きつい」「やめとけ」は、検索すればいくらでも出てきます。それも事実の一面です。ただ、10年続けた側の実感として言えるのは、この仕事の面白さは、説明を読んでも伝わりにくい種類のものだということです。紙の上で考えたことが、鉄と電気の塊になって目の前で動く。その日のことは、いまでもよく覚えています。


中の人・カズ

この記事を書いた人|カズ(元・生産技術10年)

大手製造メーカーで生産技術を10年以上(設備の立ち上げ・工程改善・量産化を現場で担当)した後、別業界の製造業へ転職。「元・中の人」の一次情報で、メーカーエンジニアの仕事・キャリア・転職を、比較サイトには書けない本音で発信しています。特定の企業・製品・個人が分かる情報は書かず、体験と一般論を分けて記しています。